インフルエンザに対する経鼻ワクチンについて
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インフルエンザワクチンについて
インフルエンザの発症の予防、重症化の抑制のために、ワクチンを接種することは非常に重要です。
これまでインフルエンザワクチンは皮下に注射する方法が主流でしたが、2024年から鼻に噴霧するインフルエンザワクチンのフルミスト点鼻液が使用できるようになりました。
注射が苦手なお子さまにとっては朗報ですし、さらに1回のみの投与で十分な効果が期待できます。
当院でもごくわずかですが経鼻ワクチンを接種できるようになったため、従来の注射用ワクチンも含めて、経鼻ワクチンについて説明します。
ワクチンの種類について
ワクチンには昔から開発されている古典的ワクチンと、最近の遺伝子組み換え技術で開発された新しいワクチン(新型コロナウイルスのmRNAワクチンなど)があります。
インフルエンザウイルスに対するワクチンは古典的ワクチンに該当します。
古典的ワクチンの種類
種類 |
特徴 |
利点 |
難点 |
代表例 |
弱毒生ワクチン |
病原性を低くした生きた病原体を接種する |
効果が得られやすい |
副反応が出やすい 感染症を発病する可能性がある |
経鼻インフルエンザワクチン MRワクチン BCG |
不活化ワクチン |
加熱処理や紫外線照射処理にて病原性を失わせている |
安全性が高い |
生ワクチンに比べ効果が低い 複数回接種が必要 |
注射用インフルエンザワクチン |
トキソイド |
細菌毒素だけを抽出し無毒化 |
安全性が高い |
複数回接種する必要がある |
ジフテリア 破傷風 |
経鼻インフルエンザワクチン(フルミスト)について
鼻に噴霧するワクチンであるインフルエンザワクチンは2003年にアメリカで承認されたもので、2023年に国内で承認、2024年から本格的に使用できるようになりました。古典的な弱毒生ワクチンであり、安全性や効果についても実績があります。
鼻に噴霧するメリットは、
- 注射の痛みがないこと
- 弱毒生ワクチンのため1回のみの接種でよいこと
- インフルエンザウイルスが侵入する入り口である鼻(局所)での免疫力が上がり、発症予防効果が期待できること
が挙げられます。
もちろん、インフルエンザに対する全身の免疫力も上がるため、感染・発症しても重症化の予防効果も期待できます。
経鼻ワクチンは注射用ワクチンと同様、世界保健機関(WHO)が推奨する3つのウイルス株(A型2種類、B型1種類)を予防できる3価ワクチンで、接種2週間後から効果が期待できます。
経鼻ワクチンと注射用ワクチンを直接比較した国内での試験はありませんが、国外での市販後調査の報告では、2016年に流行したA型(H3N2)に対しては経鼻と注射用の間で有効性の明らかな違いはないと言われています。
経鼻ワクチンの副反応
投与後に鼻水・鼻づまり(59%)、咳や咽頭痛など感冒症状(10%以上)が出ることがあります。
また、病原性は弱められていますが弱毒生ワクチンであることから、投与後にワクチン由来のインフルエンザウイルスが検出されることがあります。そのため、同居されている方に免疫力の低下している方(ご高齢の方、乳児)がおられる場合は、注射用ワクチンをお薦めします。
*接種後2週間以内にインフルエンザを疑う症状(発熱+鼻水・咳などの風邪症状)が出た場合は、必ず経鼻ワクチンを接種したことを医師にお伝えください。
インフルエンザの検査をして陽性と出た場合、接種後2週間以内であればワクチンによる可能性が高く、抗ウイルス薬(タミフルなど)を使用するとワクチンの効果が落ちてしまいます。
注射用インフルエンザワクチンと経鼻インフルエンザワクチンの違い
|
経鼻ワクチン |
注射用ワクチン |
投与方法 |
鼻に噴霧 (両鼻に0.1mlずつ) |
皮下に注射 |
対象年齢 |
2~19歳未満 |
生後6か月以上 |
ワクチンの種類 |
弱毒生ワクチン 3価(A型2種、B型1種) |
不活化ワクチン 4価(A型2種、B型2種) |
他ワクチンとの接種間隔 |
制限なし |
制限なし |
接種回数 |
1回 |
12歳までは2回 13歳以上は1回 |
効果 |
同等 |
|
効果の期間 |
1年 |
4-5か月 |
当院での価格 |
8,500円 |
1回3,500円 2回7,000円 |
経鼻ワクチンは国内では新しいワクチンですが、効果、安全性ともに実績のあるワクチンです。
注射が苦手なお子さまは、インフルエンザが流行する前にぜひ接種をご検討ください。
参考文献
・経鼻弱毒生インフルエンザワクチンの使用に関する考え方(日本小児科学会予防接種・感染症対策委員会)
・小児に対するインフルエンザワクチンについて(厚生労働省)