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スギ花粉症に対する抗体治療

[2024.01.21]
スギ花粉飛散期の治療について

スギ花粉が飛散している時期は、主に鼻の症状を和らげる薬(内服薬や点鼻薬)を用います。

ほとんどの方は、和らげる薬で症状をある程度抑えることができますが、なかには鼻の症状が強く、毎年のようにつらい思いをされている方がおられます。

そのような重度のスギ花粉症に対して、2020年よりゾレア(オマリズマブ)という注射薬が保険診療で投与することが認められるようになりました。

 

アレルギーとゾレア(オマリズマブ)について

スギ花粉などのアレルギーの原因物質(アレルゲン)が体内に入ると、アレルゲンに特異的に反応するIgEという抗体が作られます。これを「感作」といいます。

感作された方に再度その原因物質が入ると、その原因物質を排除するためにIgE抗体がすぐに体内の免疫担当細胞(=肥満細胞)に結合し、ヒスタミンなど複数のアレルギーに関わるタンパクが放出されます。これがアレルギー反応です。

アレルギー性鼻炎では、原因物質を排除するために鼻水やくしゃみがたくさん出ます。

 

ゾレアはIgE抗体に結合することで、肥満細胞への結合をブロックし、アレルギー反応を抑える作用があります。

 

花粉症治療のおけるゾレアの位置づけ

治療法

目的

対象

欠点

抗体治療(ゾレア)

症状緩和

薬物治療が効かない方

・使用できるのは花粉症の時期のみ

・高価

薬物療法

(抗ヒスタミン薬など)

症状緩和

どなたでも可

・眠気

・やめると症状再燃

レーザー治療

予防

薬を極力減らしたい方

1年程で効果がきれる

舌下免疫療法

(シダキュア)

予防

長期で緩和

薬をずっと内服できる方

花粉症を克服したい方

・飛散時期以外も内服

・即効性がない

 

ゾレアの適応

スギ花粉症の症状がある方すべてに使用できるわけではありません。

以下の条件を満たした方が適応となります。

12歳以上

・アレルギー性鼻炎の問診票で、前年が重度以上のスギ花粉症があった方で、今年もアレルギーの薬を内服しても重度以上の方

・血液検査にて、スギ抗原に対するIgE抗体がクラス3以上であり、血清中の総IgE値が30-1500IU/mlの範囲にあること

適応があるかは、実際に問診や血液検査をしないとはっきりしません

 

投与量

体重と、血液検査のIgEの値で投与量が決まります。

基本的に4週間おきの投与ですが、IgEの値が高いと投与量が増え、2週間おきになります。

(体重とIgEの値から投与量が厳密に決まる換算表があり、諸事情で変更できるわけではありません。)

 

金額

非常に高価なお薬のため、投与前に必ず金額をお伝えします。

投与する機会の多いゾレアの量と、3割負担の方の窓口での支払い金額を提示します。

ゾレア 75㎎ 150㎎ 225㎎ 300㎎

窓口会計

(3割負担)

4444円 8744円 13188円 17488円

 

ゾレアの副作用

注射部位のかゆみ・赤みなど局所の反応、アナフィラキシー(全身症状を伴う強いアレルギー反応)など

 

投与までの流れ

当院で初めてのゾレア投与を希望される方は、問診や血液検査が必要となるため、少なくとも3回目の受診時に投与となります。

1回目受診

問診で重症以上であることを確認します。

アレルギーを抑える薬(抗ヒスタミン薬や点鼻薬)を処方し、1週間経過をみていただきます。

 

2回目受診

アレルギーを抑える薬が使用しても、重症な方は血液検査を行います。

血液検査の結果は翌日以降に出るため、この段階ではまだ適応があるかははっきりしません。

 

電話連絡(翌日以降)

当院で血液検査の結果を確認し、お電話でゾレア投与の適応があるかをお伝えします。

体重とIgE値から出されたゾレアの投与量、その金額をお伝えし、最終的に投与するかどうかを確認させていただきます。

高額な薬のため、投与の予約をした後のキャンセルはお断りさせていただきます。

 

3回目

同意書を確認したのち、ゾレア投与となります。

ゾレア投与後2時間以内はは副作用が出る可能性があるため、クリニックの近くで、必ず連絡がつくように待機していただきます。

*ゾレア投与の原則として、アレルギーを抑える薬は内服しないといけないため、薬を減らせるわけではありません。

 

(注意)ステロイドの注射の治療について

20年ほど前だと思われますが、花粉症の治療にステロイド注射(ケナコルトの筋肉注射)がされていた時があったようです。

しかし、強いステロイドが長期間体内に残るため、ステロイドの副作用(免疫力低下、満月様顔貌、消化性潰瘍、注射部位の陥凹など)が現れる可能性が高いと評価されています。

ガイドラインでは推奨されない治療となっており、当院では行っておりません。

 

まとめ

ドラッグストアでも気軽に花粉症の薬を買える時代になりましたが、それでもコントロールしづらい花粉症の方は大勢おられます。

花粉症の経済損失は数千億にも上るとのニュースもあるため、快適にすごせるように、いろいろな選択肢から治療を選ぶようにされてください。

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