鼻水のお話ーその鼻水は花粉症?風邪?
花粉が飛散する時期は鼻水、くしゃみ、鼻づまりで悩む方も多いと思います。
ただ、鼻水が出ているとき、その鼻水の原因が花粉によるアレルギー反応なのか、風邪なのか質問を受けることがよくあります。
今回は鼻水の鑑別について解説します。
鼻水について
鼻水は鼻の粘膜から出てくる、少し粘り気のある液体です。
鼻水のはたらきには、①異物の排泄、②吸った空気の加湿・加温、の2つがあり、成人では1日で1-2Lほど産生され、無意識のうちに飲み込んでいます。
特に①のはたらきが重要です。鼻は外界の空気と接する場所になるため、絶えず異物(ほこりや病原微生物など)が入り込みます。
その異物が体内で悪影響を及ぼさないように、鼻の粘膜が鼻水を出して異物をとらえ、鼻の粘膜の線毛運動で鼻咽頭(鼻の奥)の方向に洗い流しています。
このように、日常的に鼻水は作られていますが、自分の体にとって有害な異物が入ってきたときには大量に鼻水を出して、体の外へ排出しようとします。これが病的な鼻水として不快に感じる症状になります。
病的な鼻水が出る原因
その鼻水を出す機序は大きく分けて2つあり、
①花粉やホコリ(ダニ)などに対するアレルギーや、アレルギーに似た反応
②ウイルスや細菌などの病原微生物の感染による風邪
に分けられます。
アレルギーとアレルギーに似た反応
アレルギーはアレルゲン(アレルギーを引き起こす物質)に対する過敏反応(IgE抗体が関わるⅠ型アレルギー)であり、いわゆる体質になります。
特にスギ花粉やヒノキ花粉に対してアレルギーをもつ方が多く、春の花粉症と言われています。
アレルギーがあるかを調べる血液検査で陽性反応が出た方に対して、アレルギー性鼻炎と診断できます。
*近年、血液検査でアレルギーは陰性と出るけれども、鼻の粘膜局所だけでアレルギー反応が出る局所アレルギー(local allergic rhinitis)という疾患が提唱されています。
アレルギー性鼻炎と同様、抗ヒスタミン薬やステロイド点鼻薬などのアレルギーを抑え込む薬がよく効きます。
また一見、アレルギーと思われるような症状が出ても、検査で何もアレルギー反応が出ない方もおり、そのときは血管運動性鼻炎と診断します。(細かく分類すると好酸球増多性鼻炎、老人性鼻炎などもありますが簡略化して説明しています。)
自律神経のバランスの問題、温度変化などによる鼻の感覚神経の刺激などによるものと言われていますが、これらに対する特効薬がありません。
アレルギーに似た症状でも鼻水が出る機序は異なるため、アレルギーを抑える薬の効果が強くは見られず、治療に難渋することがあります。
これらはいずれもサラサラ~やや粘り気のある鼻水が続きますが、基本的に透明から白色の鼻水が出ます。
風邪
上気道炎、感冒ともいわれ、ウイルス主体の感染症です。
入ってきた病原体が粘膜上皮を傷害し炎症反応を起こすため、血管の透過性が増し、最初はさらさらの鼻水が増えます。
その後、好中球などの免疫細胞により病原体をやっつけ始めるため、黄色・緑色の鼻水となり、炎症が治まってくると最終的には白色の粘り気のある鼻水が残ります。
アレルギーとは異なる機序で鼻水が出てくるため、アレルギーを抑える薬の効果は期待しにくいです。漢方薬を中心に対応することが多いですが、抗アレルギー薬の効果の一部に抗コリン作用が出るものもあり、それが風邪による鼻水を和らげることがあるため、アレルギーを抑える薬を投与することもあります。(市販の薬に入っている古い系統のアレルギー薬が該当しますが、眠気や口の渇きなどの副作用が出ることもあります。)
風邪をこじらせたり、アレルギー反応で鼻づまりが強くなり副鼻腔への換気が悪くなったりすると、細菌性の副鼻腔炎を起こすことがあります。
色付きの鼻水が出たら副鼻腔炎、というわけではなく、鼻症状が1週間前後続き、膿性の鼻漏や顔の痛みが強くなったときに細菌性副鼻腔炎を疑います。
アレルギーか?風邪か?のポイント
まずは鼻水以外の症状が大事です。
37.5℃以上の発熱、喉の赤みなど所見を伴うのどの痛み、色のついた痰があれば、間違いなく風邪と判断できますし、患者さんもこれまでの風邪の経験から風邪っぽいと感じられると思います。
一方で、眼のかゆみ、のどのかゆみ(イガイガ)など、かゆみの症状が出るときはアレルギーを強く疑います。
しかし、アレルギーでものどの痛みや咳が出たり、37.5℃以下の微熱が出たりして、風邪と鑑別が難しいことがあります。
特に、花粉症などアレルギー反応が初めて起こった場合や、アレルギーの体質のある方が風邪をひいた場合は、アレルギー主体なのか、風邪主体なのか判断が難しいときがよくあります。(アレルギーを疑っても、なぜか花粉症になったと認めたくない方もいらっしゃいます・・・。)
よって、鼻水がメインの症状の場合は、以下のポイントをみながら鑑別していきます。
時間経過をみる
アレルギーも風邪も最初の数日はサラサラの鼻水が出るため、鑑別が難しいです。そのため、2-3日経つまで経過をみて、黄色や緑色の鼻水が出たら風邪の可能性が高く、サラサラ透明な鼻水が続くときはアレルギーの可能性が高くなります。
薬の反応をみる
鼻水が出て1-2日目くらいに受診され、アレルギーか風邪か鑑別がつかないときは、風邪で用いる漢方薬とともに、アレルギーを抑える抗ヒスタミン薬をお渡しすることが多いです。
薬が早めに効き、飲み終わるとまたすぐに同じような症状が出たときはアレルギーを疑います。特に花粉が飛散している時期はアレルゲンに触れる機会が多いため、薬を使用していないとすぐに症状が出ることが多いです。
風邪であれば薬を内服していてもすぐに効くわけではなく、2-3日目から鼻水の粘り気が増していき、1週間程度かけて徐々に症状が治っていくことが多いという違いがあります。
検査を受ける
アレルギーの体質があるのか、鼻汁好酸球や血液検査で調べることもできます。
鼻汁好酸球はアレルギー性鼻炎の方の鼻水に好酸球が出やすいため、その存在を調べる検査ですが、すぐには結果が出ない(検査会社に提出するため3-4日かかる)ことや、取った鼻水の量に結果が左右されることから、精度は高い方ではありません。
また、血液検査では花粉系やホコリ系を中心にIgE抗体が出るのかで、アレルギーがあるのかを調べます。季節的に起こりやすいかどうかはわかるため、初めて花粉症になったかも?と思われる方には非常に有用な検査です。
ただ、アレルギーの体質のある方が風邪をひくこともあり、アレルギー反応があるからと言って、現時点で起こっている鼻水がアレルギーか風邪かはわかりません。
そのため、検査を受けることでその場で確実に鑑別できるか?というと、そうではない、というのが答えになりますが、鑑別の参考にはなります。
以上、鼻水が風邪なのか、アレルギーなのかについて解説しました。
鼻水が出てすぐに受診しても診断がつかない、というモヤモヤがあるかもしれませんが、どうしても時間経過や薬の反応が大事なところもあります。
お話を聞いたり、検査でわからない部分を穴埋めしたりできることもありますので、鼻水が気になるときは受診するようにされてください。
参考文献
・鼻アレルギー診療ガイドライン―通年性鼻炎と花粉症-2024年版.
・花粉症の疑問に答える : JOHNS 41(9), 2025.
・岸田直樹: 誰も教えてくれなかった「風邪」の診かた(第2版),2019.
