首のリンパ節の腫れについて
首(頸部)を触れてみて、しこりを触れたことはありませんか?
首のしこりはリンパ節のことが多いですが、他にも唾液腺の腫瘍であったり、先天性の嚢胞であったり、いろいろな鑑別疾患があります。
今回はそのしこりがリンパ節であった場合の検査や治療の方針について解説します。
頸部リンパ節について
全身には網の目のようにリンパ管が張り巡らされており、身体の各所から流れ出た組織液(リンパ液)を集めています。小さなリンパ管は集まって太くなり、最終的に鎖骨近くの静脈(血液)に合流します。
組織液には老廃物や異物(細菌やウイルス、がん細胞など)が含まれているため、血液中にその老廃物や異物が入らないようにする必要があり、その働きを担うのがリンパ節です。
リンパ節はリンパ管の要所に配置されており、リンパ節内にリンパ液が流れ込み、フィルターのように老廃物や異物をろ過し、免疫細胞により除去するはたらきがあります。
何らかの病原体が身体に入ってきたときに、その近くのリンパ節が免疫力をはたらかせ炎症が起こるため大きくなります。
口や鼻から病原体が入りやすいため、風邪症状があるときは首のリンパ節が腫れやすいということになります。
手や腕の傷から病原体が入った時は脇(腋窩)のリンパ節が、足の傷から病原体が入った場合は足の付け根(鼠径部)のリンパ節が腫れることがあります。
リンパ節は500-800個くらいあるとされ、そのうち首には200-300個くらいあると言われています。
頸部リンパ節が腫れる原因
首のリンパ節が腫れる原因は大きく4つに分けられます。
感染症を中心とした炎症によるもの(80%)
・反応性リンパ節炎(化膿性リンパ節炎)
扁桃炎を含めた上気道炎、齲歯(=虫歯)、動物が媒介する感染症、性感染症などの感染性疾患により、リンパ節内のリンパ球が増えることでリンパ節が大きくなります。
感染発症直後から起こることが多く、口やのどに近い顎の下あたりが腫れ、痛みを伴うことが多いです。原因になる感染症が落ち着けば徐々に小さくなります。
ただ、明らかに上気道炎などの感染源があればわかりやすいのですが、感染源がはっきりせず、痛みのあるリンパ節の腫れだけがみられることもあります。
反応性リンパ節炎の中で特殊な疾患が伝染性単核球症です。明らかな扁桃炎の所見があり、発熱、リンパ節の腫れを伴いますが、EBウイルスというウイルス感染のため、抗菌薬が効きません。首の後ろ側のリンパ節が腫れているときが要注意で、血液検査で診断します。
また、急性の炎症が落ち着いた後もリンパ節が残ることがあります。痛みもなく、軟らかくコロコロと動きます。首を触れて偶然気づき、心配になって受診される方が多いですが、大きさや形状が問題なければ急性炎症後の名残として様子を見ることが多いです。
動物を介して感染する疾患には、猫ひっかき病、(猫から感染)、オウム病(鳥から感染)、トキソプラズマ症(猫から感染)があります。鳥や猫の飼育歴が重要です。頻度が低く、診断に時間を要することが多いです。
・結核性リンパ節炎(頸部リンパ節結核)
結核によるリンパ節腫脹も感染症によるものに該当しますが、ある程度病状が進行しないと疑われないため、慢性的な経過をたどることが多いです。リンパ節は痛みを伴わず、徐々に大きくなり皮膚への浸潤が起こると皮膚が赤くなっていきます。
腫瘍性病変によるもの(10%)
がんのリンパ節転移、リンパ系の悪性腫瘍である悪性リンパ腫が該当します。経過が月単位と長く、痛みを伴わないことが多いです。
・がんの頸部リンパ節転移は、頭頚部に原発巣があることが多く、リンパ系の発達している咽頭癌や舌癌からの転移が多いです。鎖骨の上あたりのリンパ節が腫れている時は、胃などの内臓から転移のこともあります。
・悪性リンパ腫は血液系の悪性腫瘍の一つであり、徐々に増大する痛みのないリンパ節が特徴です。3㎝以上で痛みのないものは特に注意です。全身症状(発熱、体重減少、夜間の汗)を伴うときもあります。
原因がまだ不明なもの(数は少ないが要注意)
組織球性壊死性(えしせい)リンパ節炎(亜急性壊死性リンパ節炎)、小児にみられる川崎病やPFAPAなど原因がはっきりしない疾患もあります。
これらも発熱や痛みを伴うリンパ節腫脹であることが多いです。
・組織球性壊死性リンパ節炎は、特に若い女性で、扁桃炎がなく、リンパ節炎への抗菌薬の反応がよくない場合に疑います。悪性リンパ腫との鑑別が重要ですが、発熱とリンパ節の痛みが強いため、疑ったときは症状を早めに緩和する目的にステロイド内服を行うこともあります。
リンパ増殖性疾患(稀)
かなり特殊な疾患で、IL-6が増殖するキャッスルマン病や、関節リウマチで使用するメソトレキセートによるリンパ増殖性疾患(半分が悪性リンパ腫になる疾患)が該当します。
見分け方
リンパ節が腫れてきた経過や、発熱や上気道炎などの症状があるのかが重要です。また、リンパ節を押さえると痛いのか、皮膚に赤みがあるのかなどの炎症による症状があるのか、首のどこが腫れているのかなどが重要な鑑別点になります。
大まかな鑑別点を以下に示します。
これらの疾患は検査によってさらに診断の精度を高められます。
当院ではエコー検査を行っており、以下の図のような違いをみて、一番多い反応性リンパ節炎か、それ以外のリンパ節炎かの鑑別を行っています。
自然経過や抗菌薬治療にて改善が見られないとき、エコー検査にて腫瘍性病変が疑われるとき、原因がはっきりしないときがありますので、その時は総合病院へとご紹介します。
その場合、血液検査や画像検査(CTやMRI)、リンパ節に針を刺し細胞を抜き取って調べる穿刺吸引細胞診や、リンパ節そのものを摘出して調べるリンパ節生検まで行うことがあります。
以上、頸部リンパ節の腫れについて解説しました。
首のしこりは触っただけでははっきりしないこともありますので、少しずつ大きくなってきている首のしこりは必ず医療機関を受診するようにしましょう。
参考文献
・頸部リンパ節を見直す: JOHNS Vol.38 No.3, 2022.
