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補聴器の適応について

[2024.03.27]

ご年齢が増すとともに聞こえづらくなる方が多くなります。

最近耳が遠くなった」とご自覚されて受診される方もおられれば、一緒に住んでいるご家族に「テレビの音量が大きくなった」、「話しかけても会話が成立しないのでストレスが多い」と言われ、連れられて来られる方もおられます。

今回はご高齢の方への補聴器の適応について説明させていただきます。

 

 

ご高齢の方の難聴について

音は外耳中耳を通り、蝸牛と呼ばれる内耳で電気信号に変換され、脳に伝わります。

ご高齢の方の難聴のほとんどは、内耳にある有毛細胞のダメージにより、うまく電気信号を作れなくなってしまうことで起こります。

それ以外にも内耳から脳への神経の伝達の問題認知機能全般の低下も関与していると言われております。

これらの組み合わせにより聞こえが悪くなったり、言葉の判別が悪くなったりしてしまいます。

発症してしまう原因としては、内耳の老化以外に、環境の要素(騒音など)、遺伝の要素、個人の要素(動脈硬化、糖尿病、高血圧、喫煙など)があると言われています。

 

症状

聞こえない」というのが一番ですが、特に高い周波数の音から聞こえづらくなります。

日本語は母音(a,i,u,e,o)子音(k,t,s,m,shなど)が組み合わさってできています。

母音は500Hz~1000Hzの周波数ですが、子音は高い周波数できこえることが多く、とくにカ行やサ行、タ行は2000~4000Hzくらいの周波数で捉えられます。

そのため、カ行やサ行、タ行の言葉の聞き取り間違いが多くなってしまいます。

騒音下や早口の会話になると、聞き取りが悪くなってしまい、「音としては聞こえるが、何の言葉なのかわからない」という訴えになってしまいます。

 

よろしければ「スピーチバナナ」という言葉を検索してみてください。

聴力検査の図の上に、母音、子音の聞き取りやすい周波数と音の大きさが示されており、それがバナナの形に似ているため、名づけられたものです。

そのバナナに示されている音の大きさ以上の聴力(だいたい55~60dB)になってしまうと極端に言葉の判別が難しくなってしまいます。

「最近特に聞き取りが悪くなった」と言われる方は、徐々に悪化してきた聴力が、スピーチバナナを超えた60dBくらいの聴力に差し掛かってきてしまったためと思われます。

 

診察&検査

外耳や中耳の炎症、耳垢など治療できそうな疾患がないかを確認します。

その後、音がどの程度聞こえているのかを評価するため、標準純音聴力検査を行います。

必要に応じて、言葉としてどのくらい捉えられるかを調べるため、語音聴力検査を行います。

 

聴力検査における難聴の区分と聞こえ方

↑小

 

 

音   

 

 

↓大

難聴区分

聞こえ方

0 – 20 dB

正常

ほとんど不自由なし

20 – 40 dB

軽度難聴

ささやき声が聞き取りにくい

40 – 55 dB

中等度難聴

普通の会話の聞き取りが難しい

55 – 70 dB

耳元でないと聞き取りにくい

70 – 90 dB

高度難聴

耳元の大きな声がわからない

90dB-

ろう

ほとんど聞こえない

*会話で重要な周波数である500Hz~2000Hzの聴力の平均を取った値

 

 

補聴器の適応

聴力検査で難聴と診断されたからすぐに補聴器が必要というわけではありません。

また、高齢だから補聴器が必要というわけでもありません。

 

補聴器の適応は、年齢にかかわらず以下の3つを満たす場合です。

1)片方もしくは両方の耳に軽度以上の難聴があること
2)難聴による生活の不自由があること
3)ご本人に補聴器の装用意欲があること

 

1)、2)上図のように、平均的な聴力が40dB以上の難聴になると、家族内での会話が成り立たない、テレビの音が聞こえづらいので音量が大きくなる、など日常生活で困ることが増えてきます。

この40dBが1つの基準になることが多いですが、40dB未満の方でも大事な会議でしっかり聞こえるようにするために補聴器を装用する方もおられますし、40 dBを超えていてもまだ必要ない、と言われて補聴器を作られない方もおられます。

3)さらに下で述べますが、家族に促されて補聴器を装用しても、補聴器に慣れるまで細かな補聴器の調整が必要になり、すぐに使わなくなってしまう方もおられます。

そのため、補聴器を使い続けるというご本人の強い意志が必要になります。

 

 

補聴器を装用するまでに重要なこと

補聴器に慣れることが一番です。

視力に合ったメガネをかけると、すぐに物をよく見ることができます。

しかし、聴力に合った補聴器をつけても、すぐに聞こえるようになるわけではありません。

難聴になると脳は「難聴の脳」になってしまい、音の入らない静かな環境に慣れてしまっています。補聴器で急に大きな音が入ると非常に不快に感じてしまうため、すぐに快適に聞こえるわけではないのです。

とくに補聴器を装用してから最初の1カ月は音に対する不快感が強く、最初から聞き取りに十分な音量で装用することは難しいと言われています。

効果を実感できる音量で開始し、3か月くらいをめどに徐々に音量を上げていけるよう、通院+調整が必要になります。

また、補聴器は起床時から就寝時まで常時装用するようにしましょう。

聞こえにくい時だけ使いたい(機会装用)と希望される方もおられますが、脳が音への不快感に慣れないため、調整期間が長期化したり、十分な効果が得られずに装用をあきらめてしまったりしてしまいます。

 

 

補聴器をせずに加齢による難聴を放置した場合の不利益
  • 言葉を聞き取る能力の悪化

両方の難聴がある方に、片方のみ補聴器を装用した場合の長期経過で、装用した耳の言葉の聞き取りは保たれていましたが、装用していない耳の言葉の聞き取りは低下してしまい、その後装用しても改善しなかったとの報告があるようです。

  • 認知症の危険性

認知症になった方の約9%が難聴が原因であるとの報告があります。

補聴器を装用することで認知症を予防できるかはわかっていませんが、一部の認知機能の低下が抑えられる可能性が示唆されています。

 

 

補聴器を長く使用すると難聴は悪くなりますか?

補聴器装用により大きな音が入るため、補聴器のせいで聞こえがわるくなるのではないか?と心配される方がおられます。

たしかに強大な音を聞き続けることで内耳の有毛細胞がダメージを受ける病気はあります。コンサートなどの瞬間的な巨大な音による音響外傷、工場や飛行場など慢性的に大きな音にさらされる音響性難聴(騒音性難聴)、最近ではイヤホンやヘッドホンで長時間大きな音で音楽を聴き続けたときに起こるヘッドホン難聴もこれに当たります。

補聴器は、その方の聴力に合わせて利得や最大出力を調整しているため、難聴が悪化する可能性は低いと考えられます。

ただ、騒音環境下では補聴器の使用を控えること、定期的に聴力を評価し、継続的に補聴器を管理することが大事です。

 

 

もの忘れのある方に補聴器は使えますか?

認知機能低下のあるご高齢の方が、新しい機器の使い方を習得するのはかなり難しいと言われており、ご家族やケア担当者によるサポートがあった方が良いと考えられます。

認知機能低下のある高齢者で、新しく補聴器を購入して安定使用できている方は半数であり、その全ての方に同居者がいる、との報告があります。

購入の際には、必ずご家族が付き添い、同居されていなくても定期的にサポートできるようにしましょう。

 

以上、補聴器についてまとめました。

当院でも補聴器会社と連携し、適切な補聴器管理ができるよう体制を整えています。

最近聞こえに困っていることがあれば、お気軽にご相談ください。

 

参考文献

・耳鼻咽喉科頭頸部外科 Vol90(5),p34-40, 2018

・杉浦彩子 他:認知機能障害のある難聴高齢者に対する補聴器適合. Audiology Japan 58, 81-87, 2015.

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