手足口病について
夏(6~7月)に流行りやすく、数年に一度全国的に流行することがある手足口病という病気があります。
今回は手足口病について解説いたします。
手足口病の特徴
6歳以下に多く、とくに3歳以下のこどもが75%くらいを占めます。
いくつかのウイルスの感染が原因で起こり、エンテロウイルス属のコクサッキーA16、コクサッキーA10、エンテロウイルス71が主なウイルスです。
症状の特徴は、病名にもあるように、口の周り、手のひら、足の裏に米粒くらいの赤みを伴う皮疹、また口の中(とくに舌、頬粘膜など口の前方、軟口蓋近く)に小さな水疱を認めます。
これに伴い、軽度の口の痛みを認め、食欲が落ちてしまいます。
また、皮疹は1週間前後で痕を残さずに治癒することが多いです。
発熱(3日以内)、咳や鼻水などの上気道炎症状、下痢などの消化器症状も先行、または随伴することがあります。
重症例では脱水、髄膜炎、心筋炎に注意が必要であるため、全身状態がよくないときは入院が必要になることがあります。
手足口病の検査について
大きな施設ではウイルスを分離、中和抗体の上昇を確認することもありますが、小さなクリニックでは検査はできません。
インフルエンザのような迅速検査もないため、特徴的な見た目、発熱などの症状から診断します。
手足口病の治療について
原因ウイルスを抑え込む薬はないため、症状を和らげる治療(対症療法)が中心となります。ほとんどの方が7日以内で自然治癒します。
かかった後の登園について
インフルエンザのような厳密な隔離期間はないため、発熱、食欲不振などの全身症状が落ち着いたら登園は可能です。ただし、発熱が落ち着いても、水疱が存在する時期は感染を拡げるおそれがあるため、登園は控えた方がよいです。
また、発病する数日前から1か月近くウイルスを糞便中に排泄しているため、手洗いの励行(とくにお子様のおしめを交換したとき)、排泄物の適切な処理、汚れた服は洗濯するなど、注意をするようにされてください。
似た疾患のヘルパンギーナについて
手足口病に似たような疾患にヘルパンギーナがあります。夏に流行しやすく、4歳以下のこどもに起こりやすいです。
手足口病と同じエンテロウイルス(コクサッキーA群)が原因ウイルスで、突然の発熱(39度以上)とともに口峡部(軟口蓋や口蓋垂周囲)に水疱が数個できるのが特徴です。
発熱期間は2-4日くらいで、水疱も1週間程度消失することが多いです。
手足口病と同様、25%くらいの方に腹痛、嘔吐など消化器症状が出ます。
ヘルパンギーナも有用な検査はなく、特徴的な口の中の所見で診断します。
治療も対症療法が基本です。
手足口病と同様、隔離期間は明示されていないため、全身状態がよくなれば登園可能です。ウイルスが便から1か月近く排泄されるため、こまめに手洗いするよう注意してください。
似た症状、経過になるため、手足の皮疹がない限り、手足口病と明確な区別がつかないこともありますが、対応も同じであるため、ゆっくり休むことが大事です。
体調管理に注意して、手足口病やヘルパンギーナにかからないように注意しましょう!
参考文献
白幡雄一:臨床耳鼻咽喉科学, p476-477, 2018.