市販の点鼻薬に注意!薬剤性鼻炎について
花粉やハウスダスト、寒暖差などによる鼻の過敏症状(さらさらの鼻水、くしゃみ、鼻づまり)で悩んでおられる方が多いと思います。
その症状に対して使用した薬の影響で、余計に鼻づまりがひどくなってしまうことがあり、これを薬剤性鼻炎と言います。特に市販の点鼻薬は、使用頻度が多いと鼻づまりがひどくなってしまうことがあるため注意が必要です。
ドラッグストアでも気軽に薬を購入できるようになっている時代だからこそ注意して使用していただくために、今回は薬剤性鼻炎について解説します。
鼻炎について
鼻炎には感染性、アレルギー性、非アレルギー性に分類されます。
感染性はウイルスや細菌などの微生物の感染による鼻の炎症のことで、症状の経過から急性鼻炎と慢性鼻炎に分けられます。いわゆる鼻かぜのことを急性鼻炎といいます。
アレルギー性は、ダニやホコリによる通年性のものと、花粉(スギ、ヒノキ、カモガヤなど)による季節性のものがあり、アレルギー検査によってIgE抗体が上がっているかで診断します。
近年は、血液検査でアレルギー反応が出ない(=IgE抗体が上がらない)方でも鼻の粘膜だけにアレルギー反応を起こす局所アレルギー(local allergic rhinitis: LAR)という疾患も提唱されています。
非アレルギー性は、アレルギー性鼻炎と同じような鼻過敏症状がありますが、血液検査ではアレルギー反応が出ていないもので、原因は様々です。
機械的な刺激(鼻の中を触って鼻水やくしゃみが出る)、温度変化(冷たい空気を吸って鼻水が出る)、乾燥、香水や煙、PM2.5・黄砂などの化学物質の刺激などがあり、血管運動性鼻炎と言います。
他に加齢による老人性鼻炎、妊娠中のホルモンバランスの変化による妊娠性鼻炎、カレーやラーメンなど刺激性の強い食事の時に鼻水が出る味覚性鼻炎などがあります。
この非アレルギー性鼻炎の中に薬剤が原因で起こる薬剤性鼻炎があります。(ガイドラインでは薬物性鼻炎と書かれていますが、これまでの報告では薬剤性鼻炎の方が多いです。)
薬剤性鼻炎(薬物性鼻炎)とは?
薬物によって鼻づまりが起こってしまう状態を薬剤性鼻炎(薬物性鼻炎)と言います。鼻水やくしゃみが起こることはほとんどありません。
原因薬剤として圧倒的に多いのが、血管収縮薬入り点鼻薬です。
他にも経口避妊薬、一部の降圧薬や抗うつ薬、気管支拡張薬、非ステロイド性消炎鎮痛薬があります。
血管収縮薬入り点鼻薬について
市販の点鼻薬を購入される際に、その成分を確認していただければと思います。
トラマゾリン、オキシメタゾリン、ナファゾリン、テトリゾリン、テトラヒドロゾリン、プソイドエフェゾリンが血管収縮作用のある成分です。
「〇〇ゾリン」という成分が入っている点鼻薬は薬剤性鼻炎のリスクがあります。
血管収縮薬入りの点鼻薬を使用すると、鼻の粘膜のαアドレナリン受容体(交感神経から出る伝達物質が結合する受容体)に作用し、粘膜の血管や平滑筋が収縮することで鼻の粘膜の腫れが抑えられます。
その点鼻薬を頻回+長期間使用すると、粘膜だけでなく交感神経そのものにも作用し、交感神経から出る伝達物質(ノルエピネフリン)の分泌を減少させてしまい、鼻の粘膜の受容体の数が減ってしまいます。
このため、血管収縮薬入り点鼻薬の粘膜に対する効果が減り、作用時間も短くなり、鼻の粘膜も腫れやすくなってしまいます。
鼻づまりの改善を求めて点鼻薬の使用回数が増えるという悪循環に陥ってしまい、これをリバウンド現象といいます。
どのくらい血管収縮薬入り点鼻薬を使用すると薬剤性鼻炎になるのかが一番大事です。
報告によって対象者や検討方法が異なるため確定したことは言えませんが、平均的に1日3回、10日以上連続で使用すると自覚的な鼻づまりが起こってきており、2か月以上使用すると病理学的な変化が見られているようです。
市販の点鼻薬の添付文書(説明書き)では、「1日6回まで使用していい」と書かれているものもありますが、その通りに使うと薬剤性鼻炎になる可能性が高くなります。
夜に鼻づまりが苦しくなる方は寝る前だけ使用する、複数回使用するときはできるだけ時間をあけて1日2回までにとどめる方がいいでしょう。
血管収縮薬入り点鼻薬による薬剤性鼻炎への対応
市販の点鼻薬を使用しているかの確認
長期間続く鼻づまりの原因はアレルギー性鼻炎や副鼻腔炎など様々であるため、まずは薬剤性鼻炎を疑えるかどうかが重要です。
市販の点鼻薬を使用しているのか、医療者側からもお尋ねしますが、患者さんからも自己申告していただけると診断に早く近づけます。
血管収縮薬入り点鼻薬を中止する
血管収縮薬入り点鼻薬(=市販の点鼻薬)を中止することで、ほとんどの方で鼻づまりは改善します。
中止して3日で66%、7日で90%近く改善すると言われています。
「鼻づまりを改善させるために市販の点鼻薬を使用していたのに・・」と言われる方もおられますが、悪循環を断ち切るために中止していただくよう説明しております。
原因疾患の治療を行う
ほとんどの方が基礎疾患としてアレルギー性鼻炎による症状に対して、市販の点鼻薬を使用されているため、アレルギー性鼻炎対策にステロイド点鼻薬、抗アレルギー薬を処方します。
市販の点鼻薬は血管収縮薬の成分とステロイドの成分の混合薬であることが多いですが、その血管収縮薬の成分のないステロイド点鼻薬を使用します。市販の点鼻薬より鼻づまりを抑える力が弱く感じるかもしれませんが、数日我慢していただければ、血管収縮薬によるリバウンド現象がなくなるため、少しずつ鼻づまりは解消します。
また、市販の点鼻薬の代わりになる抗アレルギーの内服薬は血管収縮薬の成分の入った薬(プソイドエフェドリン・フェキソフェナジン配合薬)を処方することもあります。血管収縮薬の成分が入っていますが、プソイドエフェドリンは効果時間も長く、耐性も起こしにくいという特徴があります。決められた量以上を内服することがないため、薬剤性鼻炎は起こりにくいと考えられています。
他に副鼻腔炎を伴うときは抗菌薬治療を行いますし、鼻茸(鼻のポリープ)を伴う副鼻腔炎の場合は手術治療も検討していきます。
以上、血管収縮薬入り点鼻薬を中心に薬剤性鼻炎について解説しました。
2月~4月くらいはスギ花粉症の時期であり、どうしてもクリニックを受診できないときは市販の薬を使用することもあると思います。
ただ、市販の点鼻薬を使いすぎると逆効果となることもありますのでご注意ください。
毎年スギ花粉症の症状が強い方は、早めに治療を始める初期療法、注射による抗体治療もありますので、花粉症ブログ、初期療法ブログ、抗体治療ブログもご参照ください。
参考文献
・鼻アレルギー診療ガイドライン 2024年版
・市村恵一: 点鼻血管収縮薬はどのくらい使用すると薬物性鼻炎になるのか?. JOHNS 41(9): 1182-1184, 2025.
・細川悠: 薬剤性鼻炎の予防と治療は?. JOHNS 41(9): 1185-1187, 2025.
・中村陽祐: 抗ヒスタミン薬と塩酸プソイドエフェドリンの配合剤で薬物性鼻炎になるのか?. JOHNS 41(9): 1135-1137, 2025.
・湯田厚司: 見過ごせないアレルギー性鼻炎周辺疾患. 耳鼻免疫アレルギー 33(4) : 239-242, 2015.
