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小児の扁桃肥大

[2025.08.17]

受診される方の中に、お子さまのいびきが気になる、学校検診で扁桃肥大を指摘された、という方がよく来られます。

今回は小児の扁桃肥大について解説いたします。

 

扁桃とは?

扁桃とはのどにあるリンパ組織です。

口の中を開けて、口蓋垂(のどちんこ)の左右にある口蓋扁桃が有名ですが、これ以外に鼻の奥の上咽頭にあるアデノイド(咽頭扁桃)耳管扁桃、舌のつけ根にある舌扁桃があります。
のどの入り口付近に扁桃組織が取り巻いているため、ワルダイエルの咽頭輪と呼ばれています。

扁桃の構造として、特に口蓋扁桃の表面はつるっと真っ平ではなく、上皮が扁桃内に枝分かれして入り込んでおり、陰窩(いんか)と呼ばれるくぼみがたくさん形成されています。
陰窩内はリンパ球が多数存在しており、表面積を拡げることで外来抗原に対応しやすくなっています

一方で、細菌などの病原体が扁桃の陰窩の奥に入り込み、防御機能で対応できなくなると扁桃炎を引き起こしてしまい、抗菌薬でやっつけきらないと扁桃炎を繰り返してしまうことがあります。

よって、扁桃は免疫反応を起こす組織であると同時に、病原体の感染組織でもあるという2面性を持つと言われています。

 

大きさの変化

口蓋扁桃は、生後すぐはまだ未熟で、徐々にリンパ組織の肥大が始まり、生後1年で形態的に完成します。以後、感染の度合いにより2-3歳頃から肥大していき、4−5歳頃に急激に肥大度を強め、7−8歳で最大となります。以降は少しずつ退縮していきますが、退縮度には個人差があります。

アデノイドも2-3歳頃から増殖し、5−6歳で最大、以降は徐々に小さくなります。アデノイドは鼻腔、中耳、咽頭につながる上咽頭に位置するため、耳、鼻、のどのいずれの疾患に影響を及ぼします。

耳管扁桃は肥大することは少なく、舌扁桃は成人で肥大する方はおられます。

そのため、小児では口蓋扁桃とアデノイドの大きさが重要となります。

 

大きさの分類

口蓋扁桃の肥大度は、一般的にMackenzie分類やBrodsky分類で評価します。
見た目の印象で評価しますが、小児ではMackenzie分類でⅡ度、Brodsky分類で+3くらいの方はよくおられます。

 

アデノイドに関しては、当院のレントゲンではきれいに描出できないため、内視鏡によるParikh分類で評価します。
2度(耳管咽頭口にかかるくらいの腫大)の方はよくおられますが、3度以上になるといびきにつながるレベルとなります。

 

扁桃肥大に対する手術を検討する要素

上述したように扁桃には免疫組織であるとともに感染を起こす組織でもあります。
扁桃が大きいだけで特に症状もなければ何もすることはありませんが、以下の2つの要素がある場合は、扁桃を摘出する手術(口蓋扁桃摘出、アデノイド切除)を検討していきます。

 

いびきや睡眠時の無呼吸(圧倒的に多い要素)

扁桃肥大やアデノイド腫大で物理的に気道が狭くなることで、いびきや睡眠時の無呼吸の原因となります。
特に幼少期は、口の中に占める舌の割合が大きく、鼻呼吸がメインで口呼吸が苦手です。そこに鼻かぜが加わると扁桃が大きいお子さまは極端に呼吸が苦しくなってしまいます。
鼻かぜをひいているときだけいびきをかく場合は、鼻かぜのコントロールを中心に行いますが、鼻かぜがなくてもいびきや無呼吸まで至る頻度が多い場合は、心身の成長に影響が出るため、手術を検討します。

 

繰り返す扁桃炎(あまり多くない要素)

上気道炎(とくに扁桃炎)を繰り返し起こした結果として扁桃肥大になっていきます。
大きい扁桃は抗菌薬で十分な除菌ができないためか、大きいために感染しやすいのかはっきりしませんが、扁桃炎を繰り返し起こすことがあります。
とくに溶連菌感染の起こしやすい3歳以上~小学生くらいですが、繰り返す頻度はそこまで多くありません。繰り返す扁桃炎で手術を検討する方は20歳~30歳代の方が多い印象です。

*小児で扁桃炎を繰り返す方はそれほど多くはありませんので、小児で扁桃手術を検討する場合は、いびきや睡眠時無呼吸が原因になることがほとんどです。

中耳炎が改善しない原因として、耳管咽頭口(のどと中耳を結ぶ耳管の入り口)のアデノイドによる圧迫、アデノイドの病原体の中耳への流入などがあります。
以前は年齢に関係なく積極的にアデノイド切除がなされていた時期もありましたが、現在のガイドラインでは「4歳以上明らかなアデノイド腫大がある場合」との記載となり、アデノイド腫大に対してはステロイド点鼻薬で対応する方針もあるようです。

 

年齢別の対応

低年齢(0~2歳)の対応

扁桃は3歳くらいから増大し始めるため、0~2歳の小児の方が扁桃肥大によるいびき、反復性の扁桃炎で困る方はまだ多くありません。

この年齢でいびきや睡眠時無呼吸になる小児は、上気道炎(鼻炎や副鼻腔炎)の治療で改善することも多いため、内服治療やご家庭での鼻水吸引をしていただきます。2歳以上のお子さまでアデノイドが増大傾向にあれば、ステロイド点鼻薬(保険適応が2歳以上から)も有効です。

十分に上気道炎の治療を行っても改善しないときは、口蓋扁桃摘出やアデノイド切除を検討しますが、低年齢時は免疫組織として扁桃は重要な役割があり、また術後の気道管理の問題から、2歳未満の方の扁桃摘出は片方のみ行うこともあります。

上気道炎がなくても、いびきや睡眠時無呼吸がある場合は、他の疾患(喉頭軟弱症や舌根から喉頭の嚢胞、鼻咽腔狭窄、小顎症など)も疑い、喉頭ファイバー検査による気道の評価も行います。

 

就学前の(3~6歳)の対応

いびきや睡眠時無呼吸の好発年齢でもあり、まだ扁桃肥大がピークになる時期であるため、積極的な介入が望ましいと考えます。

喉頭ファイバーにてアデノイドを含めた気道の評価を行い、まずは保存的治療としてステロイド点鼻薬や抗ロイコトリエン薬で経過を見ます。
それでも改善しないときは口蓋扁桃摘出やアデノイド切除をお薦めしますが、手術を決心する決定打に欠けることもあるため、簡易睡眠検査(睡眠中の呼吸状態を調べる検査)を受けていただくこともあります。

手術適応を判断するポイントは以下の通りです。

・1年以上続くいびき

・睡眠不良による成長への影響(体重の増加不良=やせ型が多い)

・長期の睡眠中の努力呼吸や開口習慣がある方は上顎や下顎の成長が悪くなり、将来の睡眠時無呼吸につながるため、6歳ころまでの手術が望ましい

 

学童期以降(7歳以上)

扁桃肥大のピークを越える時期のため、積極的に手術の方針になることは多くありません。
よって、学校検診で扁桃肥大を指摘された方のほとんどは、経過観察あるいは鼻の点鼻薬で様子を見ています。

ただ、睡眠不足による日中の眠気や、起立性調節障害が疑われる方に重度の睡眠時無呼吸があることもあります。
また、歯科で咬合(かみあわせ)異常を指摘された方に口蓋扁桃肥大があることもあります。これはアデノイドも含めた扁桃肥大による長期の鼻呼吸障害で、顎の成長に影響を及ぼした結果と思われます。

以上の要素がある方は、喉頭ファイバー検査や簡易睡眠検査を受けた方がよいと思われます。

 

以上、小児の扁桃肥大について解説しました。

扁桃が大きいだけでは何も治療をすることはありませんが、いびき・睡眠時無呼吸がある場合や、扁桃炎を反復する場合は治療が必要になります。

気になる症状があるときは、いつでもご相談ください。

 

参考文献

・小児滲出性中耳炎 診療ガイドライン2022年度版.

・白幡雄一. 臨床耳鼻咽喉科学: p441-443, p522-529, 2018.

・山口宗太 : いびき、睡眠時無呼吸: MB ENTONI, 283: 71-78, 2023.

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