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予防シリーズ ②舌下免疫療法

[2025.11.09]

予防医療とは、病気になってから治療を行うのではなく、病気にならないように対策を練る医療のことです。

主な例として、感染症にかからないようにワクチンを打つ、高血圧や糖尿病、肥満にならないように運動や食事に気をつける、などが挙げられます。

そこで、耳鼻科領域での予防医療は何か?を考えてシリーズ化してみました。

今回は舌下免疫療法です。

 

アレルゲン免疫療法とは

アレルギー性鼻炎や気管支喘息などのアレルギー疾患の治療は、症状を和らげる目的で行うことが多いです。薬を使っている時は症状を抑え込めますが、薬がなくなるとアレルギーの体質はかわっていないため、アレルギーを引き起こす物質(=アレルゲン)に触れるとまた症状が出てしまうという特徴があります。

それに対し、アレルゲン免疫療法は、少量のアレルゲンを投与することで免疫反応に少しずつ変化をもたらし、アレルギー反応を起こしにくくする治療です。
アレルギーの体質を改善する唯一の治療でありますが、長期間(少なくとも3年以上)続けないと効果が出ない特徴があります。
日本では皮下注射舌下投与の2種類があり、当院では舌下免疫療法を行っております。スギ花粉ダニによるアレルギー性鼻炎のある方に対して適応があります。

 

舌下免疫療法の効果持続期間

舌下免疫療法は3年以上続ける治療ですが、血液検査のアレルギーの値が下がったから治療を終了するなどの指標がなく、どこまで続けるのが最適かの報告がほとんどありません。
海外の報告では、ダニに対するアレルゲン免疫療法を3年続けた場合は効果が7年持続し、4年~5年続けた場合は効果が8年続いたとのことで、4年続けるよう推奨しています。
そのため、当院でも4年の治療継続をおすすめしています。

 

アレルギー性鼻炎以外の疾患への効果

気管支喘息

軽症から中等症の気管支喘息に対して、ダニに対する皮下注射のアレルゲン免疫療法は臨床症状や気道過敏性を改善させ、症状を和らげる喘息薬(吸入ステロイド)の減量効果が期待できるとされています。

そのため、ダニ単独でアレルギーをもち、アレルギー性鼻炎を合併している安定期の気管支喘息の方に対して、長期管理の追加治療としてアレルゲン免疫療法がガイドラインで推奨されています。

 

アトピー性皮膚炎

ダニアレルギーに対するアレルゲン免疫療法により、鼻炎や喘息に合併するアトピー性皮膚炎に対しても部分的な効果があったと「アレルゲン免疫療法のガイドライン」では報告されています。

ただ、「アトピー性皮膚炎のガイドライン」ではアレルゲン免疫療法を推奨する記載はありません。
アトピー性皮膚炎の発症機序が複雑で、機械的な刺激や食物など原因が多岐にわたるため、ダニに対する免疫療法のみでは十分な効果が得られないためだと推測されます。

 

予防医療としての舌下免疫療法

ここまではアレルギー性鼻炎や気管支喘息に対する舌下免疫療法の効果についての話となりますが、予防医療とどう関わってくるのかが今回の話題です。

最近の日本からの論文で、ダニに対する舌下免疫療法にて、抗菌薬の処方が減少し、入院率も減少したとの報告がありました。

小児(5-12歳)のダニアレルギーに対する舌下免疫療法を3年継続した群と、同時期に舌下免疫療法を受けなかった群との比較で、舌下免疫療法を受けた群は、抗菌薬の使用頻度が13.7%減少し、入院率は65.2%減少したとのことです。

その論文の考察で、
・舌下免疫療法でウイルスに対する免疫応答を強化できること
・継続的な通院でアレルギー性鼻炎や気管支喘息のコントロールがよくなり抗菌薬を必要とする感染症のリスクが低下したこと
などが考えられています。 

アレルギー疾患が増えてきた背景には、衛生仮説という衛生的にきれいな環境での生活や、ワクチンの普及、感染症にかかりやすい乳幼児期での抗菌薬の使用、食生活の変化などで、免疫系のバランスの乱れが生じたためであるとの仮説があります。
これまでかかっていた結核や麻疹などの感染症にかかりにくくなったことで、獲得できていた防御免疫が低下(Th1反応の低下)し、アレルギーなどに関わる免疫応答が強まっている(Th2反応の亢進)ようです。

舌下免疫療法にてアレルギー反応を抑え込むことで、アレルギー反応で弱まっていた抗ウイルス免疫応答が強化されて感染症の悪化のリスクを下げられる、と考えられるため、舌下免疫療法は免疫系のバランスを取っている治療と言えるのかもしれません。

 

今回は予防医療としての舌下免疫療法について解説しました。

アレルギー症状も抑え、さらには感染症の悪化のリスクも下げられるという舌下免疫療法はとてもよい治療だと思います。

幼いうちから通年性のアレルギー性鼻炎や気管支喘息で悩まれている方は、ぜひご検討ください。

 

参考文献

・永田真. レジデント&ジェネラリストのためのアレルギー診療, 2024.

・Marogna M et al. Long-lasting effect of sublingual immunotherapy according to its duration: a 15-year prospective study. J Allergy Clin Immunol 126: 969-975, 2010.

・日本アレルギー学会. アレルゲン免疫療法の手引き2025

・Okubo Y et al. Real-world effectiveness for sublingual allergen immunotherapy among school-aged children and adolescents. Allergy. 2025 Jul 9. doi: 10.1111/all.16646. Online ahead of print.

・松本明生. 基礎から見た衛生仮説の再考. アレルギー68(1): 29-34、2019.

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