こどもの声がれ
声がかすれる、という症状で来られる方が多くおられますが、年代によって原因は異なります。
今回はこどもに絞って、声がれの原因、対処方法を解説します。
こどもの喉頭
声はのど(喉頭)にある声帯が振動することで出ます。
声帯は粘膜上皮、粘膜固有層(この層の一部を声帯靭帯と呼びます)、声帯筋の3層構造でできていますが、小児の声帯の層構造は10歳半ばをすぎて完成します。
また、声帯の長さも出生後は約4mmですが、年齢とともに長くなり、声変わり後に男女差が出て、男性は約15mm、女性は約12mmとなります。
大人と比べると声帯の層構造、長さともに未熟ですので、風邪をひいても声帯に負担がかかりやすいですし、泣いたり歌ったりスポーツで叫んだりする年頃ですので、こどもの時期になりやすい声帯の疾患があります。
こどもの声がれの分類
急性炎症性疾患(上気道炎、気管支炎)による声がれ
まずは上気道炎(=かぜ)や気管支炎があるかどうかが重要です。
ウイルスなどの病原体が入ると上気道の粘膜に炎症が起こり、血管が拡張したり粘膜が腫れてきたりします。
特に咳がひどい場合は、咳のために気道の圧を高めるはたらきのある声帯に過剰に負荷が加わり、炎症が強く起こりやすくなります。
声帯粘膜に炎症が起こると、声帯の振動がきれいに起こらず、声がかれてしまいます。
こどものうちは免疫力が未成熟であるため風邪を引きやすいこと、気管支炎を起こすウイルス(RSウイルスやヒトメタニューモウイルスなど)に感染しやすいことから、上気道炎、気管支炎の時に声帯炎になり、声がかすれやすくなります。
また、声門下喉頭炎と呼ばれるクループ症候群にもかかりやすいです。
パラインフルエンザウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルスなどの感染により、声帯のすぐ下(気管側)の粘膜に炎症が起こり腫れてくることで、息を吸う時の喘鳴(外にまでぜーぜーと聞こえる呼吸音)、特徴的な咳(犬やオットセイが鳴くような咳)、声がれが起こります。
クループ症候群は声がれよりも呼吸のしづらさの管理の方が重要です。
これらの急性の炎症性疾患のほとんどは、1-2週間程度で声がれは改善します。
風邪症状のない時期の声がれ
かぜが治っても声がれが長引いている、かぜと関係なく声がかすれている場合は、声帯に何らかの病変がある可能性が高くなります。
そのため、喉頭ファイバー検査にて声帯病変の有無を調べる必要があります。
生まれてすぐ~2歳まで
喉頭の先天性疾患である喉頭横隔膜症などの形態異常、喉頭の軟骨などの枠組みが未成熟であるために起こる喉頭軟化症、低出生体重児で生まれ気管挿管を受けた後に起こる声門下狭窄、心臓の手術後の声帯運動障害などが該当します。
いずれも声がれが起こりますが、生まれてすぐのすごく小さな喉頭や気管がわずかに狭くなるだけでも呼吸が苦しくなってしまうため、声がれよりも呼吸管理の方がはるかに重要になります。
弱々しい泣き声、喘鳴で気づかれることが多く、呼吸管理のため気管切開が必要なこともあるため、大きな病院で診断、治療を受けることが多い疾患です。
幼稚園から小学生
この時期の慢性的な声がれで多いのは【声帯結節】です。
こどもは大人と比べると声が高く、これは声帯の振動数が高いことを意味します。
さらにこどもは大きな声を出すことが多いため、声帯の最も振動する部分(声帯の前方1/3)に強い負担がかかり、声帯に「まめ」、「たこ」のような小さなコブができます。
これが声帯結節という声帯の病気です。
特に男児に多く、野球やサッカーなど大きな声を出すスポーツが原因になることが多いです。
診断がついた場合の基本的な方針としては経過観察です。
大人の場合は声の衛生指導、音声治療を行い、それでも改善しないときは手術を行いますが、子供の場合は音声治療も難しく、手術も否定的な意見が多いです。
経過観察の理由として、10-11歳頃に自然治癒することが多く、変声期になってから、あるいは変声期前に改善することが多いためです。
年齢とともに声帯が成熟すること、過剰に大きな声を出さなくなることが要因と思われます。
過剰に大きな声は使わないようにお伝えしますが、スポーツをしているお子さまにとってはなかなか制限ができないため長引くこともお伝えしております。
この時期に見つかることのあるもう1つの原因疾患は、良性腫瘍の【喉頭乳頭腫】です。
乳頭腫(パピローマ)ウイルスの感染により声帯やその周囲にできる腫瘍性病変です。
ウイルスはお母さまからの垂直感染であるとされ、産道での感染が主ですが、帝王切開で生まれたお子さまにも見られたとの報告もあるようです。
小児でかかるウイルスの型(6型、11型)は悪性化しないと言われています。(成人でかかるウイルスの型(16型、18型)は悪性化することがあります。)
全身麻酔で切除する手術が必要ですが、繰り返すことが多いのが特徴です。
その他の良性腫瘍では血管腫などがあり、出血や気道の狭さの原因になるときは手術が必要です。
この時期の慢性的な声がれは、経過観察でも治る声帯結節と、手術が必要な喉頭乳頭腫などの鑑別が必要になるため、必ず耳鼻科を受診した方がよいでしょう。
中学生
声がれとは言わないかもしれませんが、中学校に入る前後、12歳頃の男子に起こる声の異常が【変声障害(声変わりの異常)】です。
第二次性徴期に入ると男性ホルモンの分泌が多くなり、のどの軟骨が大きくなり、のど仏もできるようになります。
これとともに声帯も長く太くなり、声の音域が低くなっていきます。
男性の音域は1オクターブ下がり、ピッチは125Hz となります。(女性は音域が半音2.5個分下がり、ピッチは約200Hzと下がり幅は軽度です。)
この成長の変化が急激に起こると、成長した声帯という新しい楽器を使いこなせない方がおられます。のど周囲の強い緊張が起こり、声のかすれ、裏返りなど高音の声が続く状態を変声障害といいます。
徐々に改善する方が多いですが、なかなか治らない方への方針としては言語聴覚士による音声治療をおすすめしております。
のどの周囲の緊張をほぐす目的にのど周囲をマッサージする方法、声の高さを調整する筋肉(輪状甲状筋)のはたらきを抑えるためにのど仏を指で下向きに押しながら発声する方法(Kayser-Gutzmann法)などがあります。
これでも改善しない方は手術(甲状軟骨形成術Ⅲ型)もあります。
以上、こどもの声がれについてまとめました。
声がれと一言で言っても原因疾患は様々です。声がれが長引くときは、耳鼻科での診察や適切な治療を受けるようにしましょう。
参考文献
・佐藤克郎. JOHNS Vol26(9), p1490-1491, 2010.
・楯谷一郎, 平野滋. JOHNS Vol26(9), p1492-1493, 2010.
・二藤隆春 他. JOHNS Vol28(3), p488-489, p502-503, 2012
・宮本真. MB ENT 283, p128-134, 2023.
・大原卓哉. MB ENT 283, p135-142, 2023.
